Blog ブログ
2023年 茨城県立高校入試を受けて
目次
茨城県立高校入試2023春の出題内容
今年も茨城県立高校入試が行われました。大きな混乱はなく、無事終了したようです。3年前の採点ミス問題から、紆余曲折を経てこれからの県立高校入試の方向性を示すべき大切な年度だったと思います。
結果から言えば、文章を書く記述式の問題はありませんでした。国語の記述問題、作文、理科や社会の記述問題、英作文、数学の証明、作図などは一切無かったのです。昨年の7月に各中学校を経由して中学3年生に配布された「令和5年度の学力検査について」というお知らせには、記述問題が国語や、理科・社会で存在するような内容になっていました。デジタル採点を導入し。解答用紙を画像データ化して採点するとのことでした、合わせて、入試における合格者・不合格者問わず画像データ化した個人の答案用紙は、本人に公開するとしていました。
なぜ記述式問題は出題されなかったのか
ではなぜこのような「記述問題が無い」という入試になったのでしょうか。それは「採点ミス問題による混乱やそれに対する対応(謝罪含む)が面倒だった」ことにつきるのではないでしょうか。高校での指導内容や、大学受験のことを考えると記述式問題を出すべきですし、出題者としても出したかったのではないでしょうか。しかし、記述式問題に対して100%の人を納得させる採点が出来ないことも記述式問題を出題しなかった原因であると思われます。例えば英作文で、ピリオドが無かった、複数形ではなかった、文頭の文字が大文字では無かったなどはよくある減点ポイントですが、それぞれ何点減点するのかの基準がありませんし、基準があったところで受験生全員が納得して受験している訳ではありません。同級生の友人の答案を見せてもらったら、自分と同じようなミスをしているのに点数が違っていた、ということになると「納得できない」と言い出す受験生が後を絶たないでしょう。茨城県教育委員会は3年前の採点ミス問題で痛いほど、入試における混乱を味わいました。そこから学んだのは「ミスが起きない体制を作る」この一点に集約されると思います。謝罪したく無いのでしょうし、先生方の教職員組合からの意見もあったでしょう。もちろん一生が左右されかねない受験生や保護者の皆さんのお気持ちを考えたら、「答案のコピーを配るから、もし間違いがあったら申し出てね」という対応も理解できます。しかし、これで本当に良いのでしょうか。
記述式問題が無い入試が招く事態
このように答案を本人に開示する体制を取る限り、まあそもそも開示がシステム化されなくても3年前は行政開示請求で不合格となった受験生が自身の答案を取り寄せて採点ミスが発覚していますから、答案は受験生が日本の法律上時間がかかる、かからないはあったとしても、結局見ることが出来るわけです。そうなると採点ミスはいずれわかります。そうすると「採点ミスの無い体制」に帰結するのも当然ですが、こうなると塾は記述対策などやらなくなります。一問一答式の知識詰め込み問題をする、パターン化された問題をなるべく多くこなす、などの対策には走ります。これも当然です。また、公立中学校では地域差が大きいですが、地域差以上に学校内の生徒ごとの学力差が激しく、二極化していますから、取手市の公立中学校でも最低限の内容しか授業で扱えていないのが現状です。こうなると茨城県全体の高校受験をする生徒の学力、記述する力というのが中学生の間、伸ばされる機会をほとんど与えられないまま高校に進学する事態になります。
ここ数年、記述問題がないことを背景に、公立中学校の学校ワーク(教科書に準拠した問題集・学校で配布される副教材)でも、英作文の扱われ方が減少していますし、数学の証明問題では全て書かせる問題よりも用語や角や辺の名称などを穴埋めする問題が目立ってきています。
今春の入試でも千葉県で採点ミスの問題が発覚しました。今後も他の都道府県で採点ミス問題は出てくることでしょう。人が行う採点に、ミスが0であり続けることなどあり得ないからです。そうすると茨城県で起こったことがこれからも他の地域でくり返され、「ミスの無い入試体制」が広がっていくのでは無いでしょうか。
記述式問題をなくさない提言
しかし、本当に子供達にとってこれが正解なのでしょうか。ここ数年の茨城県立高校を受験する生徒達は、事なかれ主義の大人達の都合で振り回されているのです。まずは茨城県教育委員会が、しっかりと入試問題の出題内容を提示すべきではないでしょうか。さらに、記述問題を出題するとして、その採点基準を明確にわかりやすく伝え、中学校、補足的に塾でもその採点基準に則った採点を普段からしていれば、答案を開示したところで大きくもめることは無いのではないでしょうか。もちろん、面倒な作業が多く、周知徹底までは時間がかかることも予想されます。しかし、子供達は高校受験が人生のゴールではありません。大学進学を希望する子供達も多くいることでしょう。その子供達の成長の機会を奪うような入試制度改革は改悪でしか無いと思います。責任ある大人達が尻込みしてはいけないのでは無いでしょうか。
まとめ
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。慶伸塾では、記述式問題が出題される可能性は低いものとしながらも、入試に絶対は無いという観点から、またすぐに記述する力が身につくものではないという考えから、記述問題も引き続きある程度扱いたいと考えております。ただ、その前にやることも多くあります。記号選択式や、穴埋め問題がまだ正解できない生徒さんに、いきなり記述式問題を課すことは出来ません。基礎的な学力をきちんとつけた上でのお話だと思います。
今後の入試に関する発表を見守りたいと思います。
シェアする